研究概要 |
本研究では超音波キャビテーションによる水中有害有機物質の分解のための装置開発およびキャビテーションによる分解能力の性質を解明することを主目的とした.平成15年度においては,溶液中の残存気体がキャビテーション分解法の分解効率に及ぼす影響を系統的に調べた.前年度の結果から,分解効率が水中に含まれる気体の種類と濃度によって顕著に異なることが示唆された.そこで,プェノールとメチレンブルーに対して,(i)脱気を行わない溶液中,(ii)透過膜モジュールを用いて完全に脱気を行った溶液中、(iii)脱気後,アルゴンを飽和させた溶液中,(iv)脱気後,ヘリウムを飽和させた溶液中,の4種類の溶液中で分解実験を行い,その効率を比較した.それぞれ10ppmの濃度からスタートし,超音波照射とともにこれらの濃度の変化を分光器によって測定した.フェノールに関しては,(i)がもっとも高い効率を示し,(ii)がもっとも低い効率を示した.メチレンブルーに関しては,(iii)がもっとも高い効率を示し,(ii)がもっとも低い効率を示した.フェノールに比べてメチレンブルーは揮発性が高く,主にキャビテーション内部に気化した状態で分解が進むと思われる.そのため,キャビテーション気泡内に熱伝導率の低いアルゴンが含まれる場合、断熱圧縮効果が高まり,気泡内の温度上昇が顕著となり,分解効率が増加したと推測された.また,キャビテーション気泡の数は残存気体核の数に依存するために,脱気された溶液ではキャビテーション数が優位に少なく,分解効率が減少したと考えられる.このように,系統的にキャビテーションによる分解特性を調べたことにより,その性質が明らかとなった.
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