研究概要 |
加工液(油)を使用するのが常識であった放電加工を気中で行い,パイプ電極から供給する気体と工作物との化学的加工を積極的に利用することにより,従来の放電加工に比較して数倍の加工速度を達成することができる. 平成15年度は特に,切削では加工が困難である超硬合金の加工を行い、供給気体に酸素を用いることにより炭素鋼の加工と同様に従来の放電加工の約3倍の加工速度が得られることを明らかにした.そして,放電パルス条件,気体の供給条件などを変化させて,最適な加工条件を明らかにした. 一方,気中放電加工の放電ギャップは狭いので短絡が生じ易い.したがって,加工形状が深い場合は放電が不安定となりやすい.これは,従来の液中加工用に作られた放電ギャップの制御機構の周波数応答性が低過ぎるからである.そこで,ギャップ制御の周波数応答性を向上させるために,圧電素子を利用したアクチュエータを加工テーブル上に搭載し、加工機の主軸制御と同調させることによってギャップ制御の応答性を向上させた.その結果,加工速度が約2倍に向上し,工具電極消耗率が約半分に減少することが明らかとなった.また,圧電アクチュエータを使用する代わりに,超音波振動子を用い,25kHzの振動数でギャップを周期的に変動させることを試みた.この場合も短絡が減少し,加工速度が超音波振動を加えない場合に比べて約3倍から5倍に向上することが明らかとなった. また,上記の研究結果に基づき,直径1mmのパイプ電極を用い,超硬合金の3次元形状の高速加工を試みた.その結果,従来の放電加工に比べて加工速度,加工精度の両方で大幅な向上が得られることが明らかとなった.
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