研究概要 |
非晶質Fe-Cu-Nb-Si-B薄帯を応力下で結晶化させ,クリープ誘導磁気異方性と、ナノ結晶状態を同時に実現することにより,ナノ結晶金属磁性薄帯の透磁率制御した。この薄帯の透磁率は,熱処理中の印加応力の大きさにより所望の値に制御することができる。得られた薄帯をトロイダル状に成形し,透磁率制御型金属系高周波用コアを作製した。このコアの0.1-1MHzでの磁気損失は,この材料に対して期待される理論下限値と一致し,汎用のギャプ付きフェライトコアに比べて著しく小さな値であった。さらに,高温での磁気特性を評価したところ,室温から520Kの範囲で磁気特性が温度に依存しないことが明らかになり,温度安定性の面でもフェライトコアの限界を上回っていることが確認された。 透磁率制御金属薄帯の生産性を更に向上するために,予め加熱した熱処理炉中を応力を印加した薄帯を移動させながら結晶化させる,連続結晶化法を開発した。この方法では,結晶化後の薄帯は連続的に巻き取られるため,長尺の試料を得ることができる。本研究で扱うクリープ磁気異方性は,非晶質からの結晶化に際して短時間で誘導されるため,薄帯の移動速度によらずほぼ一定の異方性を誘導することができた。まだ,得られた単位応力あたりの磁気異方性は,試料を固定して結晶化させた試料に対して報告されている従来の値に比べて1.5〜2倍程度であった。このことは,連続結晶化法が,必要応力低減の観点からも有効であることを示唆している。
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