研究概要 |
Ecological Sanitationの考えにより,現在の下水道システムとは異なる発想の技術(排水分離・分散型の処理システム)の必要性が世界的に強調され始めている.本研究はこの排水分離・分散型処理システムの中核となる非水洗型コンポスト型トイレについて糞尿中有機物分解過程のモデル化を行うことを目的としている.平成15年度は分解過程のモデルの作成と糞尿中有機物の特徴付けと反応モデルのパラメータ決定のための糞尿分解実験を反応温度・おが屑含水率との関連で実施した.得られた結果を以下に要約する. 1.有機物分解モデルの構築 糞尿中有機物の好気的分解過程を次のようにモデル化した:(1)有機物の加水分解,(2)加水分解後の有機物を用いた微生物の増殖,(3)微生物の自己分解.これらの反応速度をモノー型の速度式で表現した.し尿中有機物を加水分解速度の速い有機物,加水分解速度の遅い有機物,難分解有機物に分類した.実験結果との照合により,温度依存性も含め各パラメータの値を定めた.モデルによるシミュレーション結果は回分試験結果,し尿の連続投入におけるし尿の分解を適切に表現できることを確認した. 2.糞尿分解実験 おが屑と便を混合したのち,所定の温度・含水率状態に保って便の好気的分解過程を給・排気中酸素濃度,二酸化炭素濃度の連続測定,おが屑混合物のCOD測定により計測した.その結果以下のことが明らかとなった: (1)中温度域(40℃以下)では,有機物の加水分解速度の異なる二つの成分を考える必要があること. (2)一方,高温度域(40℃以上)では有機物の加水分解速度に差をつける必要がないこと. (3)今回開発したモデルは便中の有機物分解過程を十分な精度で再現でき,反応モデル中の反応速度係数の温度依存性はアレニウス式により整理できること. (4)想定される温度域(約50℃)では,おが屑マトリックス中における便の分解は約24時間以内に終了する. (5)最適な運転条件は温度55℃,含水率60%程度とするとよいこと.
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