研究概要 |
本研究では、,従来のイオン結晶的な金属酸化物の概念とは異なる視点に立ち、共有結合主体のオキソメタレート基よりなる多元系金属酸化物を合成し、それらの結晶構造を解析するとともに、電気的・磁気的特性を明らかにすることを目的とする。 本年度は、昨年度合成することに成功したNaBa_2Ni_3O_6の単一相多結晶体試料と本年度新たに合成に成功したNaBa_2Cu_3O_6の単一多結晶体について、電気的磁気的性質を調べるとともに、粉末X線回折パターンのリートベルト解析により得られた結晶構造因子をもとに、マキシマムエントロピー法を用いた電子密度解析を試みた。また、リートベルト解析で精密化された格子定数と原子座標を用いて、分子軌道法による電子状態計算を行った。 NaBa_2Ni_3O_6の精密化された斜方晶系の格子定数値は、a=8.2971(7)、b=11.2338(4)、c=14.3855(13)Å(空間群Fmmm)となった。抵抗率は、室温では10^6Ωm以上で、温度の上昇とともに減少し、773Kでは、23Ωmになった。電気抵抗率の温度依存性のアレニウスプロットより算出された活性化エネルギーは0.22eVであった。ゼーベック係数は、室温付近では負の値(-56μV/K,333K)を示し、温度の増加とともに一様に増加して、500K付近を境にして正に変化し、773Kでは+64μV/Kとなった。SQUID測定の結果、5-300Kで常磁性体であることが示された。Ni原子1個当たりのボーア磁子の有効数を求めたところP_<eff>=1.25となった。 NaBa_2Cu_3O_6の精密化された斜方晶系の格子定数値は、a=8.3837(18)、b=11.4348(25)、c=14.4630(30)Å(空間群Fmmm)となった。SQUID測定の結果、5-300Kで常磁性体であることが示された。Cu原子1個当たりのボーア磁子の有効数はP_<eff>=1.57となった。スピン分極を考慮した分子軌道法による電子状態計算の結果、測定された磁気モーメントは電子スピンに加え、軌道角磁気モーメントの効果が加わっていることが示唆された。また、同型構造を有するNaBa_2Cu_3O_6とNaBa_2Cu_3O_6の化学結合状態の違いが明らかになった。
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