研究概要 |
本研究の目的は,水溶性ジルコニウム塩を添加して安定化した濃厚泥漿の成形法を確立のための基礎研究をすることにある.我々はアルミナ,ジルコニア,炭化ケイ素についていずれの場合も水溶性ジルコニウム塩の添加により弱酸性領域で分散・流動性が向上し,最低なpH範囲からpHが上昇するとその流動性が極端に悪くなることを泥漿の流動挙動の測定から示した.特にアルミナ泥漿の場合、pHが4.3付近で良好な流動挙動が得られ,そのpHよりも低くなっても高くなっても流動性が悪くなること,このpH4.3付近で60vol%という極めて高濃度な泥漿を調製することが可能であることを見出した.この濃厚泥漿にあらかじめ尿素を添加し,型に流し込む直前に尿素加水分解酵素を添加し,泥漿のpHを均一に上昇させて泥漿を凝集固化させる新規なその場直接成形法を開発することができた. 一方,泥漿調製にはこの分散剤として使用する水溶性ジルコニウム塩の簡便な定量法が必要となる.我々は水溶性ジルコニウム塩の水溶液が陽イオン性高分子電解質としての性質を示すことに着目し,陰イオン性高分子電解質であるポリビニル硫酸イオンと定量的に反応することを利用したコロイド滴定法を用いて定量できることを見出した.この滴定法の終点検出にコロイド滴定で終点検出指示薬として使用されるトルイジンブルー(TB)を選択的に検出するTB選択性PVC電極を用いた電位差滴定法によって終点前後でのフリーのTBイオン濃度変化を検出して終点を再現性良く簡便に決定できることを報告した. また,濃厚化極限近傍の泥漿の調製に本申請で購入した撹拌脱泡装置を使用する方法について検討し,泥漿調製の短時間化,均質な泥漿の混合に有効であることを示した.この撹拌脱泡装置を使用したその場直接成形法で従来の成形法とかわらない高密度、高強度の焼成体を短時間で作製可能であることを示した.
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