研究概要 |
浮遊液滴振動法を微小重力環境と組み合わせることにより,気液界面張力,密度,粘性率を同時に測定できる新しい手法を確立した.液滴を1.5m落下させて得られる0.55秒間の微小重力環境において,液滴の表面振動をラインセンサー,レーザー,シリンドリカルレンズの組み合わせたシステムにより記録した.レーザーのバックライトは液滴を投影し,シリンドリカルレンズによってラインセンサー上に集光する.レーザーは平行光線であり,液滴がレーザー柱の中のどの位置にいても,正確に液滴の影を投影できる特長を有する.また,90°ずれた2つのラインセンサーに集光させることで,直交する2方向の最大径を記録した.小さな液滴を用いることで,表面振動の振動数を大きくし,短時間で振動解析が行えるように調整した.純水,Sn, Cu, Fe液滴の固有振動数,半径および減衰率を求め,次の式に代入して気液界面張力γ,密度ρ,粘性率ηを算出した.γ=3πMν^2/8,ρ=3M/4πR^3,η=3M/20πτR,ここで,M:質量,ν:表面振動数,R:液滴半径,τ:減衰時間である.フーリエ解析によって得られた振動は,L=2のモードに対して単一のピークとなったことから,表面振動が理想的であり,熱物性値の算出式を補正することなく,用いることができることを示した.また,算出された水の熱物性値は文献値と良く一致し,本手法が物性値の測定手法として十分に有効であり,その測定精度は宇宙ステーションや10秒間の落下塔を用いた場合に劣らないことが明らかとなった.そこで,本手法を用いて上記の種々の金属の熱物性値を精度良く測定した.
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