研究概要 |
アモルファス状態のシリカやチタニアなど酸化物はその分子構造がネットワーク構造を有し,ヘリウムや水素分子のみが透過可能,あるいは,ヘリウムや水素分子すら透過困難な微小な細孔を形成する。このネットワークにはsiOH基あるいはTiOH基が存在し,これらのOH基のHは水素イオンとして拡散移動することが可能であり,高いプロトン伝導性を示すことが示されている。本研究では,シリカあるいはチタニアを用い,プロトン伝導性薄膜の創製を行うことを研究目的としている。プロトン伝導性が発現することが明らかとなれば,プロトン伝導性を有するセラミックスと白金などの電子伝導性材料をナノサイズで並列複合化することで,新規な水素分離膜の創製が可能になると考えられる。 昨年度は,プロトン伝導性薄膜の創製に関する研究を行ない,チタンテトライソプロポキシド(TTIP)とリン酸を出発原料とするチタンリン複合酸化物は,高いプロトン伝導性を有することを明らかとした。 今年度は,ゾルゲル法によりチタンリン複合酸化物をスライドガラス,SUS管,Anodisc,カーボンシート上に製膜する手法を確立した。さらに,表面抵抗および体積抵抗の測定により,温度50-300℃,湿度0-10%におけるプロトン伝導率の評価を行ない,300℃,水蒸気圧50kPaにおいても0.01S/cm程度の高い値を示すこと,150℃では水蒸気が5kPa程度(相対湿度で約1%)で10^<-1>S/cm程度に増加することも明らかとした。高温水蒸気下では,電気伝導率は徐々に低下することが示され,EDX測定より膜中のリンが減少していることが明らかとなった。そこで,製膜直後のチタンリン複合酸化物を水中へ浸漬することによって,膜の安定性が向上することを見出した。
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