研究概要 |
1.繊維状ファージを用いた新規な蛋白質間相互作用測定系の改良 ファージに二種類の蛋白質の片方のみを提示し,片方を分泌型蛋白質として産生させ両者の間の相互作用を測定することができる新規蛋白質間相互作用測定系split Fv (spFv)システムを構築した.これを抗体の可変領域を構成する二つのドメイン(H鎖可変領域VHおよびL鎖可変領域VL)間の相互作用測定に応用したところ,確かに抗原添加に伴う相互作用変化を測定でき,またファージ産生ホストとしてアンバーサプレッサー変異株を用いることで,二つのドメインVH, VL両者を同時に提示し,可変領域としての抗原結合能を評価することも出来た.しかしこれをライブラリからの抗原結合クローンの濃縮に用いた場合,しばしば発現産物の細胞毒性によるとみられる遺伝子の欠落が起こったため,ベクター上にコードされる遺伝子の上流および下流に2個のグルタミンパーメアーゼ由来ターミネーターを挿入したところ,遺伝子の安定性に顕著な改善が見られた.よって以後このベクターを用いてライブラリからの選択をおこなった. 2.SpFvシステムを用いた,抗体可変領域の安定性を決める残基の同定リガンド依存的に会合制御が可能なペプチドのモデルとして,抗原依存的に会合制御が可能なリゾチーム抗体HyHEL-10のVH/VL界面に存在するFR2領域に着目し,この部分のアミノ酸配列のうち抗原依存的な会合を示さない抗体D1.3において異なる計13残基をHyHEL-10型およびD1.3型にしたライブラリを作製しそのVH/VL相互作用および抗原結合能への影響を考察した.この結果,VH/VLの抗原依存的結合に決定的な役割を果たす残基(H39)が同定され,また抗原結合能とVH/VL相互作用との関係について包括的な知見を得ることができた(増田ら,化学工学会第68年会発表予定,投稿準備中).
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