研究概要 |
アリルアルコールは準安定なアリル化試薬として安価な工業製品である。一方、カルボニル化合物のカルボニル炭素のアリル化、カルボニルα-位でのアリル化は有機化合物を目的化合物へ誘導する際に最も重要な手法である。これらのアリル化を行うには一般にアリルアルコールをハライド、エステルに変換し、活性化することが必要である。 本課題ではアリルアルコールを活性化誘導体へと変換することなく、直接アリル化源として利用することを目的としている。しかも、これをパラジウムに関して触媒的に行う。副生成物は水のみであり、室温で行うなど、環境調和型の新反応の開発を目的とした。その結果以下に示す数々の画期的な成果が得られた。 1)アリルアルコールと脂肪族アルデヒドをトリエチルボラン存在下、パラジウムを触媒として室温で反応させることによりアルデヒドα-位での選択的アリル化を可能とした。これは在来法に比べ原料や反応操作の上で幾段にも勝っている。 2)アリルアルコールと脂肪族アルデヒドをトリエチル亜鉛存在下、パラジウムを触媒として室温で反応させることによりアルデヒドカルボニル炭素での選択的アリル化を可能とした。これは在来法に比べ原料や反応操作の上で幾段にも勝っている。 3)アリルアルコールやジヒドロフラン、ジヒドロピランは保護基としても有用である。保護基とは役目を果たした後では切り捨てられる。本課題ではアリル-THF,アリル-THPエーテルをアリル1,4-ブタンジオール、アリル1,5-ペンタンジオールに変換する新法を開発した。これは、廃棄物の有効利用という観点から画期的な発想でもあり、独創性の高い新技術である。
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