研究概要 |
炭酸ガスハイドレートの生成および貯蔵を20気圧(約2MPa),2〜3℃のマイルドな温度および圧力条件で実施し,炭酸ガスを媒体とした冷熱貯蔵サイクルを圧力容器,液化炭酸ガス,水,圧力開放弁,コンプレッサーなどで構成することで,産業空調分野において夜間電力利用による冷熱貯蔵を促進可能であることが実験結果から可能と判断されたことから,省エネルギーと温暖化防止に対し有効なシステムとして,炭酸ガスハイドレートを利用した冷熱装置および冷熱方法に関する特許出願を研究成果の一部として実施した。特許の主要部分は,炭酸ガスハイドレートの生成による冷熱貯蔵し,圧力開放によってシャーベット状の氷を瞬時に生成し,それらの冷熱利用サイクルに関するシネテムの構築についてであり,サイクルの生成条件を設定した。 本年度の研究では,保有している炭酸ガスハイドレート生成・循環(フローループ)装置によって,炭酸ガスハイドレート生成のより効率化と高い生成速度を得ることを目的として,ハイドレート平衡曲線からのフガシティを与えた場合のハイドレート生成速度の相違をフローループ内の流体における温度上昇量に基づき測定した。平成14年度においてPVCAP添加の効果がかなり小さい結果となったことから,平成15年度においては,添加物質をTHF(テトラヒドロフラン)に変更し,塩化ナトリウムとの併用による生成速度の制御に関する実験的研究を実施した。その結果,THFを0.4%〜0.8%添加することで,添加しない場合に比較してハイドレート生成速度を1.5〜3.5倍程度に増進させることが可能であることを確認した。これによって,炭酸ガスハイドレートを利用する閉フローループを基本とする熱サイクルにTHFを相当量添加することで,冷熱の蓄熱プロセスの高速化,すなわちハイドレート生成時間を約40%〜60%短縮できることを明らかにした。 また,ハイドレート利用の冷熱貯蔵システムを岩盤内貯蔵と複合させて産業用空調を実現するための地下貯蔵空間の温・湿度調整の実証試験を開始した結果,冷熱の蓄熱を長期間において平均化して利用であることが明らかになった。
|