研究概要 |
原料樹種の異なる炭の土壌混合が栽培土壌の理化学性・生物性に及ぼす影響を,連作条件下で比較検討した. 4葉期のサラダナを,用土を3L充填した1/5000aワグネルポットに定植した.培養土と炭を容積比95:5で混合したものを用土とした.原料樹種(スギ・ナシ・タケ)および炭の粒径(大:0.3〜1cm小:0.3cm未満)を組み合わせた6区と無処理区(培養土のみ)の計7区を設けた.7月から12月にかけて,3回連作した. 炭のEC, pH,交換性塩基,CECは,ナシ炭が高い傾向だった.混合の土壌への影響に,樹種の差は明確ではなかったが,大粒ではいずれの樹種もCECが高くなった.収量は,無処理では連作により著しく減少し,炭混合区では変化が小さかった.特にナシ小粒では,ほとんど減少しなかった.交換性K20は大粒より小粒で高くなる傾向にあり,ナシ小粒では収穫期にも高かった.ナシ小粒の土壌への混合は,交換性塩基供給効果(肥料効果)が最も高いと推察された.NO3-Nの流亡量はスギで高く,タケで低い傾向にあった.またナシ・タケでは小粒に比べ大粒で流亡量が少なかった.植物体NO3濃度は無処理で多く,ナシ炭で少なかった.他の樹種でも低下する傾向にあった.地下部生体重は,1作目では無処理に比べ炭混合で低下した.2作目はほとんど差がなく,3作目は樹種に関らず小粒で高くなった.土壌糸状菌は栽培中に,細菌は休作中に増殖する傾向を示したが,菌数に及ぼす樹種,粒径の影響は明確ではなかった. 以上より原料樹種により炭の性質が異なることが明らかとなった.また,土壌と混合することにより,ナシ・タケ炭の大粒ではNO3-Nの流亡の抑制,ナシ炭の小粒では交換性塩基の増加と持続的供給効果が望めると考えられ,各種炭の有効利用の可能性が示唆された.
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