研究概要 |
本研究は,腐植酸の溶解性をメチル誘導化法によって変化させ,3次元構造の研究体系を水系ではなく有機溶媒系で確立し,新規情報を取得することを目的とした。昨年度は腐植酸メチル誘導化法の確立とHPSEC分析に基づく腐植分子構造のユニット仮説(腐植酸分子には会合体形成の基本ユニットが存在し、水系では水素結合による会合体形成で見かけの分子量が大きくなる)を見出した。本年度はこのユニット説を裏付け,さらに詳細な情報を得るために,以下の研究を実施した。 (1)分取HPSEC法による腐植酸の分子サイズ別画分の調製法の確立:腐植酸の水系HPSECによる分取分画法について検討し、適切な溶媒、試料濃度等を最適化した。本法で分子サイズの異なる分画試料が極めて容易に得られることが判明し、腐植酸のHPSEC分取分画法の最適化の題で投稿準備中である。( (2)分子サイズ別腐植酸画分のメチル誘導体の解析:(1)で得た分子サイズの異なる分画試料のメチル誘導体を作製、非水系HPSEC分析に供した。その結果、80K、13K、6K画分の各メチル誘導体の分子サイズピークはほぼ同じ値(Mp2.3K)を示し、3K画分のみがMp1.4Kと大きく異なっていた。このことから腐植酸は少なくとも2つの分子サイズユニットで構成されることが見出された。腐植酸の2つの基本ユニットの題で(3)の成果とあわせて投稿準備中である。 (3)フルボ酸とそのメチル誘導体の解析:腐植酸と同様の解析法で比較的低分子のフルボ酸についても検証した。その結果、フルボ酸はMp1.4Kのユニットで構成されること、しかも腐植酸の3K 画分誘導体と一致することが判明したため、腐植酸は大きなユニットとフルボ酸に共通するユニットで成立している仮説を見出した。「2つのユニット」説を立証するためには、今後、腐植酸分画試料の誘導体を分取して構造解析する必要がある。
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