研究概要 |
ハーボキシジエンは除草剤として報告のあった放線菌の代謝産物であるが、申請者らは細胞周期のG1,G2期の進行を阻害する化合物として再発見した。この化合物の細胞周期阻害のメカニズムを解析していく中で、イントロンを含む未成熟mRNAが翻訳され、異常なタンパク質が生産されることがわかってきた。しかし、スプライシングを直接阻害するものではないと考えられた。このことから核内で合成されたmRNA前駆体は成熟するまで核内にとどまり、細胞質で翻訳されることがないことを保証するシステムが存在し、ハーボキシジエンはその監視機構そのものを破壊しているものと推定された。そこで本研究は、このイントロンの存在意義とも関わる進化的にも重要なmRNA代謝の基本的制御メカニズムの解明するための出発点として、ハーボキシジエンの作用機構解析を目的とする。 ハーボキシジエンによる未成熟mRNAが翻訳されるメカニズムを解明するため、ハーボキシジエンの標的分子を同定する。そのための第1の方法としては、ハーボキシジエンの持つカルボン酸部位にスペーサーおよびビオチンを有機化学的に付与し、ハーボキシジエンと結合するタンパク質をストレプトアビジンに対するアフィニティーによって精製する。第2の方法は、分裂酵母でイントロンを含む遺伝子(pgr1,cct8)の第1イントロン中にインフレームでβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を挿入し、イントロンが翻訳されたときのみ酵素活性が検出できるような系を構築し、遺伝学的な解析を行うこととした。現在までのところ、活性を保持したハーボキシジエンのビオチン化誘導体の作製には成功していない。一方、第2の方法において分裂酵母においてイントロンの翻訳をβ-ガラクトシダーゼ活性で検出することに成功し、ハーボキシジエンの標的分子をスクリーニングするための基盤を確立した。
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