研究概要 |
本研究は,水質水理環境の変化を,メダカを指標として感知できないかを検討したものである.我々の目視では認識できないようなメダカの行動の相違を,カメラによる監視とメダカの行動パターンの特性抽出によって定量化し,これによって水質水理環境の変動を察知しようとする,いわゆるバイオモニタリングの試みで,その最大の目的は,メダカの行動パターン特性を抽出分類し,水質水理環境を逆推定することにある.そのためには,メダカの行動パターンを再現する非線形短期予測モデルの開発と,カオス時系列解析手法を基本とした数理モデルを計算機シミュレーションによって開発することが重要となる. 以上の目的遂行のため,本研究ではまず,水質水理環境に対するメダカの遊泳行動を把握することを目的に室内水槽実験を実施した.実験には環境ホルモンとして知られているTBT(トリブチルスズ)やPCB(ポリ塩化ビフェニール)に暴露したメダカを使用し,正常メダカの行動パターンとの違いに注目して行動解析を行った.得られた遊泳軌跡に対して,フラクタル次元解析やリアプノフスペクトラム解析を実施し,メダカの遊泳行動の決定論性あるいはまたカオス性の検証を行うとともに,異常行動の抽出指標の検討を行った. 一方,メダカの行動を数値シミュレーションにより再現するため,カオス時系列解析モデルの開発を並行して行った.その試みの第1歩として,カオス発生の可能性を内包する数学モデルとして,指数型ARモデル,等の生態力学系モデルを検討した. これらの基礎的知見から,水質水理環境に対するメダカの行動パターン特性の抽出方法やメダカの行動パターンのカオス時系列解析による水質水理環境の逆探索法を明らかにすることができた.
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