研究概要 |
那須病を発症するDAP12の変異を有する発現ベクターを構築し、細胞株にトランスフェクションしてその発現様式を野生型DAP12と比較した。野生型では、細胞膜上に発現するのに対して、2種類の変異(開始コドンの変異=Aと細胞外ドメインの変異=B)のうち、Aでは蛍光でもウェスタンブロット解析でもまったく発現がみられず、Bでは野生型に比して小さな蛋白が合成されていたが、その多くは細胞膜にとどまらず培養上清に移行していた。マクロファージへの分化能を有するM1細胞に導入し、ligandのシグナルを加えることによって、野生型のDAP12を導入したM1細胞はCD11b,CD16,CD11cなどのマクロファージ分化を示した。一方、変異型のA, Bのタイプとも上記のような膜発現の亢進は認められなかった。形態学的も、野生型のDAP12を導入したM1細胞は細胞融合による多核巨細胞を形成するのに対して、変異型のA,Bタイプはいずれも刺激を加える前と変化がなかった。このようなDAP12の野生型と変異型の発現様式、マクロファージ分化の膜発現と形態学的変化の観察から、DAP12はマクロファージへの分化にとって必須の分子と考えられる。Aのような発現が消失している場合はもちろんのこと、Bのような短い分子でも正常の機能は有しておらず、Aと同様の結果となった。マクロファージの分化異常がどのように那須病発症に関与するかはこれからの課題である。
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