研究概要 |
腹部大動脈瘤破裂7症例から採取された大動脈破裂部位(9標本)に発現する細胞外マトリサクス分解活性を検出する目的で、クマリン標識合成基質と蛍光顕微鏡を用いて観察した。 新鮮大動脈組織をO.C.T.コンパウンドに包埋し、4〜6m厚の凍結切片を無蛍光スライドガラス上に貼付した後、500μMクマリン標識合成基質を添加したトリス塩酸緩衝液(0.05 M Tris-HC1,pH7.5+0.1 M NaCl+10mM CaCl_2)で凍結切片をおおった。使用した合成基質はマトリックス・メタロプロティナーゼのクマリン標識合成基質(7-methoxycoumarin-4-y1)acetyl<MOCAc)-Arg-Pro-Lys-Pro-Tyr-Ala-Nva-Trp-Mel-Lys(2,4-dinitrophenyl)(Dnp)-NH_2(NFF-2)、37℃、〜96時間インキュベーションの条件で検討した。潜在型マトリックス・メタロプロティナーゼ(MMP)の活性化剤である2mMp-aminophenylmercuric acetate (APMA)添加群も作製して検討した。併せてHE染色、Elastica van Gieson染色標本を作製した。 大動脈瘤壁内でのクマリン蛍光は予想に反してほとんど検出できなかった。血腫の付着している外膜では時にクマリン蛍光を認めることがあった。次いでAPMA添加群について検討してみると、APMA添加群では9標本中4標本の大動脈内膜にクマリン蛍光を認めたが、中膜と外膜にはクマリン蛍光は認めなかった。内膜内のクマリン蛍光は内膜深部に一致して局在していた。クマリン蛍光は24時間インキュベーションではほとんど認められず、48〜72時間で蛍光強度が最高に達した。 APMA非添加群でクマリン蛍光を認めなかったことは活性型MMPは大動脈瘤壁内にほとんど存在せず、MMPの大部分は潜在型で存在していることが推測された。外膜血腫内でのクマリン蛍光は血腫内の好中球に含まれる酵素によるものと思われる。
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