研究概要 |
リーシュマニアの細胞膜にはエルゴステロール類似のステロールが含まれており,真菌と同様なステロール生合成系の存在が示唆されている。本研究は,トリアゾール系新規経口抗真菌剤として開発中のSS750が真菌のエルゴステロール生合成を阻害することに着目し,SS750のリーシュマニア症に対する新規治療薬としての可能性について検討することを目的として計画された。本年度は,リーシュマニアのステロール生合成系に及ぼすSS750の影響を検討した。出芽酵母のエルゴステロール生合成においては、アセチルCoAからラノステロール合成に至るまで12種類、ラノステロールからエルゴステロール合成にまで7種類の酵素遺伝子が同定されている。SS750はラットやヒトの肝臓のP450(sterol C-14 demethylase)を阻害せず、カンジダのlanosterol C-14 demethylaseを阻害するという結果を得ている。そこで、[^<14>C]-メバロン酸をリーシュマニアに取り込ませ,原虫から脂質を薄層クロマトグラフィで展開し、代謝産物を定量した。その結果,SS750はリーシュマニアのlanosterol C-14 demethylaseを含むいくつかのステロールの合成を阻害する可能性が示唆された。また、アマゾンリーシュマニアの本遺伝子のクローニングを試みたところ,近縁種であるクローズドリパノソーマの同遺伝子と約70%の相同性のある533bpのPCR産物をクロン化することに成功し,リーシュマニアにおいても同遺伝子が存在することが強く示唆された。今後は,本遺伝子の全長の塩基配列を決定するとともに、リコンビナント蛋白質を産生・精製し、その生化学的性状を明らかにする予定である。
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