研究課題/領域番号 |
14657066
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研究種目 |
萌芽研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
細菌学(含真菌学)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山本 達男 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (80095843)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2003年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2002年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | 腸管出血性大腸菌 / 血清型O86 / 家族感染 / HUS / 粘着 / ベロ毒素ファージ / ゲノム解析 / type III 分泌システム / EHEC / O86 / ベロ毒素 / MRHA / WIMモデル / 炎症性サイトカイン / アジスロマイシン |
研究概要 |
平成11年9月、鹿児島県下で腸管出血性大腸菌感染症が発生した。患者は3歳の男児で、軟便で発症、翌日に下痢、血便、腹痛を呈し、3病日にHUSを発症、痙攣がみられ、意識が混濁、5病日に瞳孔散大、7病日に死亡した。なお、患者便から2型のベロ毒素(VT2)を産生する新しい血清型(O86:NM)の腸管出血性大腸菌が分離されている。この患者の家族からは、同じく血清型O86:NMの大腸菌が分離されたが、ベロ毒素非産生の同一型菌であった。当該菌は、従来の腸管出血性大腸菌とは異なって、菌体分泌蛋白をヒト上皮細胞内に注入する為のtype III分泌システムをもたず、代わりに新しい粘着様式(diffuse adherence)を示した。以上の事実から、家族感染株(血清型O86大腸菌)が男児の腸管内でVT2ファージを獲得してしまい、新型の腸管出血性大腸菌に変化、HUSを惹起し、男児を死亡させたと考えた。まず、全国の下痢症患者から血清型O86大腸菌を収集した。クラスター解析を行った結果、わが国で血清型O86大腸菌による下痢症が流行していることが分かった。流行型菌はすべてベロ毒素非産生株で、サイズ115Kbのプラスミド(pO86)をもっていた。pO86の全塩基配列(120,728塩基)を決定した。pO86は160個のORF(遺伝子)を保有していたが、その一つに粘着因子と目される遺伝子が存在した。この遺伝子を変異させたところ、ヘマグルチニン活性と粘着能力の双方が周時に消失した。したがって、pO86はdiffuse adherenceを支配するプラスミドで、その粘着因子がヘマグルチニンであることが分かった。男児株が染色体上にVT2ファージを獲得した証拠を塩基配列解析によって得た。血清型O86腸管出血性大腸菌は開発したマウス感染モデル(WIMモデル)で、血清型O157腸管出血性大腸菌と同程度の病原性を示した。
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