研究概要 |
初年度の結果を踏まえ,以下の2つの感受性要因-環境要因系モデルについて検討した. (1)メタロチオネイン欠損(MTKO)-水銀モデル:C57BLマウスおよびこれを野生型とするMTKOマウスを周生期に0.5mg/m^3の水銀蒸気(Hg^0)に連日6時間ずつ曝露し,出生後の行動機能を評価した.MTKOではオープンフィールド活動性の低下を認めた。受動回避試験およびモリス水迷路(空間学習機能試験)では,メスのMTKOマウスのみ,Hg^0曝露群の成績が対照群より劣っていた.曝露群における脳内Hg濃度はピーク時期で1ppm未満であり,これらの行動影響が比較的軽度の曝露で生じていることが示唆された. (2)性ホルモン-甲状腺ホルモン撹乱モデル:胎生期にジエチルスチルベストロール(DES)処理し性ホルモン環境を攪乱した動物で行動異常が認められたことを受けて,ここに甲状腺ホルモン撹乱を加えた系について検討する予定であったが,甲状腺ホルモン撹乱の影響のみ検討を行なった。WI系雄性ラット(10週齢)に4週間0.03%の濃度のメチルチオウラシル(MTU)溶液を飲料水として自由に摂取させた.4週目に賭殺し、血漿中の甲状腺ホルモン(T3,T4)およびコルチコステロン(CORT)の各濃度をラジオイムノアッセイ法にて定量した.その結果、副腎重量,血漿中甲状腺ホルモン濃度指標はいずれもMTU投与群において有意に低値であった。血漿中,CORT濃度においてはMTU投与群と対照群との間に有意差はみられなかった。飲料水にMTUを混和することによって甲状腺ホルモン系低機能モデルラットを作成できることがわかった.以上,本研究では3つのモデルを検討し,一般毒性が生じないような負荷で行動影響を惹き起こすことができたが,多動かつ学習障害を示すようなモデルの確立には至っていない.今後,未検討の項目についても詰めていきたいと考えている.
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