研究概要 |
慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)に対する治療法の中で、EBMとして確立され、第一選択と考えられているヒト免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)には、治療反応群と非反応群の存在が知られている。これを規定する臨床的・遺伝的背景の把握、更にそれをもとにした治療オプションの選択基準の開発を目的に、三省合同ガイドラインに基づく遺伝子収集を含む全国調査を施行した。全国730施設を対象に、アンケートおよび十分な説明とそれによる同意を得たDNA抽出用採血を施行した.集計したアンケートは、治療前後のADL(modified Rankin score)をもとに治療反応群(responder)・非反応群(non-responder)に群別化し、それぞれの臨床的および電気生理的特徴を解析した。responderは61.5%であり、残りの38.5%の患者は無効なnon-responderであった。筋萎縮はnon-responderに高頻度であった。運動神経伝導検査では正中神経・尺骨神経ともに、responderにおいて伝導速度および遠位潜時の有意の遅延を認めた.しかし、筋活動電位振幅はnon-responderで有意に低下した.感覚神経伝導検査でも同様の所見が得られた.臨床的および電気生理的に、軸索障害が主体である症例ではIVIg療法の有効性が乏しいことが判明した.現在、対象施設を更に広範に設定してデータの充実を図るとともに、IVIg反応性を規定する遺伝的背景として軸索関連因子(NFs, KIFs, CNTF etc)を標的に、ゲノムワイドスキャン、候補遺伝子解析を開始した.
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