研究概要 |
平成15年度の研究により、human metapneumovirus(hMPV)が小児呼吸器感染症の原因ウイルスとして重要な位置を占めていることが明らかにされた。平成16年度は研究を一歩進めて次の結果を得た。 1.分離された7株のhMPVのN,P,M,F,M2,SH,G領域の塩基配列を決定して系統樹を作成したところ、大きく2系統に分類されて、それぞれがさらに2群にわかれ、計4つのグループ(1A,1B,2A,2B)に分類されることが判明した。 2.3つの表面蛋白F,G,SHのうち、F蛋白のアミノ酸配列はグループ間でよく保たれていたが(95%)、SH蛋白(55%)とG蛋白(33%)は大きく異なっていた。 3.SH蛋白とG蛋白のアミノ酸の違いはextracellular domainに集中しており、生体側の免疫によって時間をかけて変化してきたものと推定された。 4.F蛋白とG蛋白は中和抗体の抗原として重要と推定される。グループ間の変化の大きいG蛋白が中和抗体の形成にどの程度の意味を持つのかはhMPVの再感染を考える上で重要と推定される。1B群にhMPVに感染後3週間後に2B群のhMPVに感染した症例を経験した。 5.平成15年度にはhMPV感染細胞を利用した蛍光抗体間接法による抗体価測定系(hMPV IFA)を確率したが、Baculovirus系を用いてF蛋白を大量発現させた細胞を用いてF蛋白特異抗体価の測定系(Bac-F IFA)を作成した。両者の測定結果はよく相関し、Bac-F IFA法がhMPV IFA法よりも高感度であった。 6.2005年に新しいcoronavirus NL63が発見された。hMPV検出のために採取した鼻汁118検体より3検体より同ウイルスが検出された。
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