研究概要 |
無機リン酸(以下リン)には独自の代謝系やホルモンが存在する。我々はその候補分子のいくつかを同定し機能解析やノックアウトマウスを用いてリンセンサーの存在とその生理学的重要性を明らかにした。本研究では、リンセンサーのいくつかの候補分子の機能とリン利尿因子FGF23,MEPE、Stanniocalcin, phosphatoninの分泌調節機構を解明することでリンセンサーの候補分子からリン利尿因子分泌へのシグナル経路について検討した。リンセンサーは脳脊髄液のリン濃度維持に関与しており、そのシグナルは脳脊髄液関門から分泌されるFGF23,Stanninocalcin2, phosphatoninの量を調節して末梢組織(主に腎臓)に作用させるリン代謝ホルモン分泌を支配する受容体(センサー)である。この候補分子はPRP90、type IIc Na/Pi cotransporter, Pi receptor-like protein(PIP)、Pi-responsive factorなどが考えられる。そこでラットの第3脳室にリン溶液を注入することにより、数時間後にリンセンサーの機能を活性化させた。その結果、type IicNa/Pi transporter蛋白の著しいリン酸化およびPIP蛋白量の増大が見られた。さらにFGF23の分泌量を指標としてDNAマイクロアレーとリン酸化検出用2次元電気泳動法で反応する他の候補蛋白の挙動を調べた。しかし遺伝子発現レベルにおいてリン濃度に反応して著しく違いのある蛋白質は同定されなかった。またFGF23の昆虫細胞での量産および精製と特異抗体作製を試みているが、現在のところ、FGF23の血中濃度測定用の特異抗体は得られていない。今後、リンセンサー分子からのシグナルネットワークを、分子単位で確認する予定である。
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