研究概要 |
1.ヒト肝前駆細胞(oval cell, small hepatocyte)の単離・培養系の確立 すでにヒト肝前駆細胞をヒト組織より単離し、培養する手法を試みている。単離には磁気カラムとセルソーターを併用すると共に、細胞種特異的なリガンドを固定化したカラム、培養表面を作製し、単離効率が向上した。新型セルソーターの導入によりSP系細胞の分離・回収能が一段と向上したため、現在ヒト肝前駆細胞の表面マーカーフェノタイプの確立を行っている。これによりマーカー抗体が確定すると、分離技術が更に向上する。 2.マウスの肝細胞における、マイクロアレイ遺伝子発現解析 本年度は肝幹細胞の遺伝子発現レベルにおける特徴を調べる研究を行った。雄性C57/BL6マウスにHiggins & Andersonの2/3肝切除を施行し、実験的肝切除モデルをマウスで作成し、2、6、24時間と3、7日後にそれぞれ、sham operation群1頭と肝切除群3頭より残肝(再生肝)、膵臓、血液を採取。Agilentのマウス用cDNAマイクロアレイ(8,737遺伝子)を用いて遺伝子発現プロファイルの経時的変化を肝臓、膵臓それぞれで解析した。その結果 (1)肝切除術後何れかの時点で4倍以上の発現増強または1/4以下の減弱を認めたのは473遺伝子。 (2)肝切除群での経時発現量の変化がsham手術群でのそれと同程度である遺伝子や多峰性を示す遺伝子を除き、肝再生に伴い特異的に変化する162遺伝子を選別した。内訳は2,6,24時間,3,7日目の順に、17,28,37,27,23の計132遺伝子が4倍以上増強、また、4,13,25,6の計30遺伝子が1/4以下に減弱した。 (3)肝再生における開始シグナルの候補として、2,6時間後にインターフェロンγ誘導遺伝子、platelet factor 4、procollagen type V、転写因子(NF-1)、増殖因子(FGF)等の増強が見られた。24時間後には、イノスリン受容体、アポトーシス関連遺伝子等の増強、3日後にはG蛋白αs、転写因子(SIN3B)、toll-like receptor-1の増強を認めた。肝再生の終息シグナルの候補として、24時間後には細胞分化因子(tryptophan 2,3-dioxygenase)の増強、3日後にはaxinの増強、癌遺伝子(RAB18)の減弱等が抽出された。 3.再生担体としての3次元モデル 再生担体としての3次元モデルとして「東洋紡」による中空ファイバーモデルが現時点では最適の実験モデルであると考えられたため、これを用いた再生肝細胞実験を開始している。中空糸の膜厚が50ミクロンと大きいため、液性因子の疎通性がよくないため、改良を試みたが現在のところ不十分である。他社の中空糸モデルを試みているところである。
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