研究概要 |
大腸癌の抗癌剤薬剤耐性獲得におけるRbタンパクおよびE2Fの役割 5-fluorouracil(5-FU)は、消化器癌化学療法に汎用される抗癌剤であり、この薬剤に対する耐性獲得機構としては、5-FUの標的酵素であるthymidylate synthase (TS)の増量、同化酵素活性の低下などがいわれている。我々は、TSがその遺伝子配列のプロモーター領域に転写因子E2F-1の結合部位を有することから、E2F-1の転写活性、またそれを調節するretinoblastoma gene product (pRb)の耐性獲得への関与を検討した結果、5-FU耐性ヒト大腸癌細胞株DLD-1/5-FUにおいてはpRbのリン酸化のレベルとE2F-1の転写活性のレベルが5-FU感受性親株DLD-1に比較して上昇していることを確認、大腸癌細胞が5-FUに対する耐性獲得機構においてpRb/E2F-1を介した転写活性調節が重要な役割を演じていることを見出した。続いて5-FU耐性ヒト大腸癌細胞株DLD-1/5-FUに対して、そのE2F転写活性を低下させるべくE2F decoy oligodeoxynucleotide (ODN)をtransfectionしたところ、5-FU存在下での細胞のviabilityがODNの濃度依存性に低下、5-FUに対する感受性が回復した。耐性化した癌細胞に薬剤感受性を回復させることは、耐性克服という観点から重要な治療戦略であり、5-FU耐性ヒト大腸癌細胞株DLD-1/5-FUにおけるE2F-1転写活性の上昇は、この転写因子がDNA合成および細胞増殖に密接に関与している点から考えても新たな治療戦略の標的因子と考えられた。(International Journal of Oncology,21,309-314,2002) ^<99m>Tc-HIBIシンチグラフィーによる胃癌化学療法薬剤選択 ^<99m>Tc-MIBIはアントラサイクリン系抗癌剤に対する腫瘍の耐性獲得に寄与するP糖タンパクにより細胞外へ汲み出されるため、^<99m>Tc-MIBIシンチグラフィーは、肺や頭頚部癌のアントラサイクリン系抗癌剤に対する感受性予測に用いられている。今回我々は、^<99m>Tc-MIBIシンチグラフィーが胃癌患者においてアントラサイクリン系抗癌剤ファルモルビシンに対する感受性予測に有用であることを明らかにした。すなわち胃癌においては^<99m>Tc-MIBIの集積度とP糖タンパクの発現レベルの間には優位な逆相関が存在し、^<99m>Tc-MIBIの集積度の高い胃癌症例に対しては、現在汎用されている5-FUを中心とした化学療法より、ファルモルビシン単独療法の効果が優れていたことを報告した。(Clinical Cancer Research, in press,2004)
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