研究概要 |
不安定血栓に自己細胞を移植し、血管壁のリモデリングを促進させる細胞移植法を開発し、血管内治療に応用するための基礎研究を行った。 ルイスラットを用い、移植細胞として皮膚より線維芽細胞を、骨格筋より筋衛星細胞を採取した。 まずin vitroにて両細胞を共培養したところ、線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化が促進されることを確認し、gel contraction assayにて両細胞の移植により細胞外基質の収縮が促進されることを確認した。 その結果をふまえラット左頸動脈を結紮し、その中枢側にできた血栓に細胞および細胞外基質を注入し、4週後の組織標本にて血栓内の膠原線維の比率、血栓内の線維芽細胞のαSMA陽性率、血管内腔の面積を測定し、器質化の程度を評価した。実験群は結紮のみ(n=4,I群)、collagen gel(以下CG)(n=4,II群)、線維芽細胞を混合したCG(n=4,III群)、筋衛星細胞を混合したCG(n=4,IV群)、線維芽細胞と筋衛星細胞を混合したCG(n=4,V群)の5群を作成した。血栓内の膠原線維比率はI群(0%),II群(16.4±17.9%),III群(52.8±34.3%),IV群(39.1±30.9%),V群(75.8±33.8%)とV群が最も高かった。さらにV群は血管内腔面積(0.30±0.28mm2)がIII群(0.53±0.21mm2),IV群(0.54±0.20mm2)より小さく、組織の収縮を認め、血栓内の線維芽細胞のαSMA陽性率も他群より高く、器質化がより進行していた。 以上本研究で解離腔を模した不安定な血栓内に線維芽細胞と筋衛星細胞を細胞外基質と合わせて移植すると、器質化が劇的に促進し、組織の収縮を促すことが明らかとなり、大動物を用いた血管内治療実験を行うための基礎データが得られた。
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