研究概要 |
いかに胎児が母体から保護されているかというメダワーの問いに対する解答としてIndoleamine-2,3-dideoxygenase (IDO)の関与が報告された。本研究ではIDOを移植臓器に特異的に発現させることができれば、全身への免疫抑制を行うことなくLocal immunosuppressionが可能ではないかとの仮定の下に、実験を遂行した。 前年度に骨芽細胞前駆細胞を用いて、IDOのEx vivo gene transferによる免疫抑制効果を検討したが、Immunological Toleranceを誘導するには至らなかった。本年度は、IDOの発現プラスミドベクターを心臓に遺伝子導入し、遺伝子導入心臓移植を行った。心臓移植は、頸部もしくは腹部にnon-working heartとして移植した。遺伝子導入は、Non-virus法のEpstein-Barr virus-based episomal plasmidを選択し、導入効率は血管内皮細胞を中心として、アデノウイルスと比較しても遜色のないものであった。発現期間は1ヶ月で検出不能となったが、それと共にドナー心は、細胞性免疫を主体とした反応形態で拒絶するに至った。また、2週間で移植臓器を摘出し、再度遺伝子導入を行っても、同様に拒絶された。このことは、遺伝子発現期間が本現象を規定しているのではないことを示唆している。当初目的とした、Immunological Toleranceは本方法を用いることでは達成することが出来なかった。 本研究が示すものは、胎児が母体から攻撃を受けないメカニズムは複数存在し、ToleranceをBreakするには、そのどれかをシャットダウンさせることで達成されるが、拒絶がかかる状況において、人為的にTolerance Inductionを起こすには、唯一つのメカニズムの模倣では不十分であることが理解された。
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