研究分担者 |
由谷 親夫 国立循環器病センター研究所, 臨床検査部, 部長
中谷 武嗣 国立循環器病センター研究所, 臓器移植部, 部長 (60155752)
菅 理晴 国立循環器病センター研究所, 再生医療部, 室長 (80265397)
日高 京子 国立循環器病センター研究所, バイオサイエンス部, 室長 (00216681)
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研究概要 |
骨髄細胞が生体内で心筋へ分化する可能性を示す報告はこれまでいくつかあったが,in vivoの現象であるため,その真偽やメカニズムに関して十分に検討できていなかった.そこで我々はこの現象を解析する目的で,GFPマウスの骨髄細胞とラット新生児心筋細胞のin vitro共培養システムを確立し,心筋組織に類似した環境を再現することで,この"環境因子"が骨髄細胞の心筋細胞への分化を誘導することを実験的に明らかにした.しかしながら,本システムにおいて心筋細胞へと分化する骨髄細胞はごくわずかであり,心不全患者の心機能を改善するためには心筋細胞への分化誘導を促進する工夫が必要であると考えられた。そこで本システムの培養液中に顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を0ng/mlから100ng/mlまで濃度を変えて添加したところ,心筋細胞分化するGFP陽性骨髄細胞数はG-CSF濃度50ng/mlまで用量依存的に増加することが確認された.また,ヒト拡張型心筋症心由来の心筋培養細胞を用いた系においてもG-CSFは用量依存的に総細胞数,Troponin I, Ki-67陽性細胞数を増加させた.更に,免疫組織学的検討でヒト正常心筋では陰性のG-CSF受容体が,ヒト拡張型心筋症の心筋細胞においては不均一に染色された.以上より,G-CSFが骨髄由来細胞だけでなく拡張型心筋症のような病的心筋細胞にも直接的に作用して,心筋細胞の分化,増殖を誘導することで,拡張型心筋症患者の心機能改善に促進的に働く可能性が示唆された.
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