研究概要 |
1)膀胱癌由来細胞に対する蛋白質導入法による野生型p53蛋白導入 11個のアルギニンからなるポリアルギニン(11R)を野生型p53蛋白に付加した(11R-p53)。様々な濃度の11R-p53をJ82およびT24細胞に導入し、その導入効率および発現持続時間について検討した。0.1,1および10μM 11R-p53を導入した場合、ほぼすべての細胞に導入されることが明らかになった。また、T24細胞内において、11R-p53は急速に分解されその半減期は、12時間以内であった。一方、J82細胞では、11R-p53の半減期は、24時間以内であった。 2)11R-p53の膀胱癌細胞増殖抑制効果 0.1,0.5および1μMの11R-p53をJ82あるいはT24細胞に導入し、その細胞増殖抑制効果についてアデノウイルスベクターを利用したp53遺伝子治療と比較検討した。両方の細胞において、11R-p53は有意に増殖抑制効果を示した。また、その効果は濃度依存的であり、アデノウイルスベクターによるp53遺伝子治療法と同程度であった。 3)in vivoマウス膀胱内への蛋白質導入法の試み C3Hマウス膀胱内に11R-GFPを経尿道的導入を試みたが,全く膀胱組織内に導入されなかった。一方,膀胱をトリプシンで処理し,ムチン層とアンブレラ細胞のみを除去すると,効率よく移行上皮細胞に導入された。また、同マウス膀胱内に癌細胞を植立し、11R-GFPを導入すると、癌細胞に特異的に導入させることが明らかになった。 本研究成果より、p53蛋白導入法が膀胱癌治療法として有用であることが示唆された。
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