研究概要 |
糖尿病網膜症発症に活性酸素(ROS)が重要な役割を果たしている可能性が報告されている。一方、全身高血圧症が糖尿病網膜症の増悪因子であることがよく知られている。そこで、我々は血圧上昇時における血管壁伸展の網膜症発症に及ぼす影響及びその機序について検討した。方法:ブタ網膜血管周皮細胞(PRPC)を用い、Flexcer Cell細胞進展装置を使用し、細胞が日常生体内で経験していると思われる〜10%/60cpmの周期的機械的伸展を負荷した。細胞内シグナル伝達の検討はWestern blot法を用いた。キナーゼの詳細な検討は特異的薬理的阻害剤及びアデノウイルスベクターによる強制発現を用いた。アポトーシスはTUNEL法及びDNALadder法により評価した。結果:周期的伸展によりROS産生増加(3.6+/-0.9 fold,p<0.01)が認められた。時間依存性、伸展強度依存性にSAPK/JNKのリン酸化が認められ、ROS阻害剤により抑制された(83%,p=0.011)。さらに周期的伸展はCaspase3の活性化(6.5+/-1.4fold,p<0.01)及びTUNEL陽性細胞の増加(17.8% vs 39.8%,p<0.01)、DNA断片化を誘導し、これらはJNKの阻害により正常化された(83%,p=0.0089,90%,p=0.0045)。結論:周期的伸展により産生された活性酸素がJNK-caspase経路を活性化し、周皮細胞のアポトーシスを誘発することによりpericyte lossを促進し、網膜症を増悪する可能性が示唆された。これにより、高血圧症の合併が網膜症発症を促進する機序が示唆された。
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