研究概要 |
我々は,オステオプロテゲリンホモ欠損マウスとヘテロ欠損マウスの海綿骨RNAを用いて作製したサブトラクションcDNAマイクロアレイのスクリーニングより,約70個の遺伝子が両マウス問で発現変動していることを見いだした.破骨細胞の分化や骨芽細胞の活性化などの過程において,それらの遺伝子発現がどのように変化するかをRT-PCRで解析した結果,興味深い変動を示すいくつかの候補遺伝子を同定することができた.それらの中で破骨細胞の分化に伴って発現が上昇する遺伝子群に対してRNAiを用いた実験を行ったところ,発現を抑えることにより破骨細胞の分化を抑制する遺伝子(F,D1)を同定した.これはこの2つの遺伝子が破骨細胞の分化に重要な役割を果たしていることを示唆する.In vitro破骨細胞分化系において遺伝子F,D1とD1の類似遺伝子であるD2の発現を詳細に解析したところ,F,D1は分化のタイムコースに従って発現が上昇したが,D2は反対に発現が減少した.これらの遺伝子は核内に存在すると考えられるが,破骨細胞分化に先立ってその発現量が増減することから,分化の誘導に関わる可能性が考えられる. また,我々は破骨細胞形成抑制因子であるオステオプロテゲリンが特異的に結合する破骨細胞分化因子RANKLの可溶型を過剰発現するトランスジェニックマウスを作製し,骨芽細胞分化に必須の転写因子であるRunx2の欠損マウスと交配させた.その結果,Runx2欠損マウスでは骨芽細胞が存在しないためほとんど認められない破骨細胞が交配マウスにおいて増加することが判明した.破骨細胞の分化にはRANKLが必須であり,Runx2により分化する骨芽細胞がRANKLの重要な供給源となることが明らかとなった.一方,交配マウスにおける破骨細胞の分化は可溶型RANKLによりレスキューされたものと考えられた.
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