研究概要 |
本研究の目的は、熱の発生の少ないといわれているエキシマレーザーの歯科応用の可熊性を検討することである。固有波長193nmのArFエキシマレーザーをヒト象牙質に照射し、以下の結果を得た。 1.10mJ,20Hzにて健全象牙質、齲蝕象牙質にArFエキシマレーザーを照射したところ、照射による歯質の実質欠損が健全象牙質で認められ、50秒の照射で約1mmの深さに達することが走査型電子顕微鏡による観察にて明らかとなった。齲蝕象牙質でも照射による歯質の実質欠損を認めたが、個々の齲蝕の状態によりその欠損深度は異なっていた。 2.同条件で健全象牙質に照射したところ、照射時間を100秒まで延長しても、表層の温度は40度以上を示すことはなかった。 3.エネルギー分散型X線分光法により、元素分析を行い元素Ca, P, C, N, Oについて重量比を求めたところ、照射部位の表層は、未照射部位と比べ,Cが相対的に多く観察された。一方、照射部位の表層から5〜10μmの位置から深部にて、元素Ca, P, C, N, Oについて未照射部位と同様の構成比を示した。 以上の結果より、ArFエキシマレーザーにて象牙質の切削・形成が可能であることが明らかになった。また、熱の発生も少ないことから、象牙質基質のタンパク質の変性も少なく、残存歯質の劣化が生じにくいことが考察された。元素分析の結果より、元素構成比の変化は、レーザー照射面表層のみで変化していたことも、その考察を裏付ける結果となった。
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