研究概要 |
p53遺伝子欠損マウス(以下p53KO)の皮膚,脾臓より樹状細胞(以下DC)を採取し、骨髄よりGM-CSFおよびIL-4にてDCを誘導した.得られたDCを用いて長期培養を試みたところ,継代に耐えうるものではなかった.そこで,C57BL/6Jマウス(以下B6)より同様にDCを採取し,p53KO由来DCと金属抗原に対する各種反応性を比較検討したところ,抗原特異的増殖反応,FACSによる細胞表面マーカー発現,およびサイトカイン産生能に著明な差は認められなかった.そこで歯科用金属抗原に対する反応性の検討には,B6由来DCを用いることとした. 歯科用金属材料に含まれるNi, Co, Cr, Tiについて,PBSと生理食塩水中での溶出条件を検討した後,T細胞に対する細胞刺激能をMTT法と[^3H]サイミジンの取り込みにより検討した.T細胞の金属に対する増殖能とIL-2産生能は,Niに対して最大値を示し,Tiに対して最小値を示した.また,DCとT細胞の共培養実験においても同様の結果が得られた.さらに,金属刺激時のDC表面に発現する活性化マーカーを調べたところ,Niに対するCD80,CD86の発現上昇が認められた.なお, DCの臓器由来別では骨髄および皮膚由来DCの反応性が高いことが判明した.そこで局所免疫のクロストークの関与を検証するため,細胞移動・遊走を調節する因子の1つであるE-カドヘリンの発現パターンをウエスタンブロット法で検討した.その結果,耳介にNiアレルギーを発症させたB6の頚部リンパ節でE-カドヘリンタンパクの発現上昇が認められ,逆に耳介皮膚で発現減少が観察された.脾臓ではE-カドヘリン発現に変化は認められなかった.すなわち,皮膚のDCあるいはランゲルハンス細胞上のE-カドヘリン発現を減弱させ,DCを所属リンパ節へ遊走させる因子としてNiが機能していることが明らかとなった.
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