研究概要 |
再発性アフタ性口内炎は,疾患そのものがそれ程重篤ではなく自然治癒するために,これまで研究対象としてそれ程注目されておらず,その原因についても明らかにされていない。しかし,同疾患は日常的に頻繁に認められる疾病であり,程度によっては摂食障害をも招く。申請者らは,再発性アフタ性口内炎患者ではカルシウムとビタミンCの摂取が欠乏している可能性があるという仮説を疫学研究から得ている。 本研究の目的は,動物実験においてそれを検証することである。昨年度までは,ビタミンC合成能が先天的に欠如したラットの飼育方法を確立し、実験動物として用いた。ビタミンC欠乏ラットを4週間飼育した後,口腔内上皮(歯肉,舌,頬粘膜)の変化を組織学的に検索した。通常の方法に従ってHE染色により組織標本を作製した。その結果,ビタミンCが欠乏していないラット(対照ラット)と比較して同部位に著明な変化は認められなかった。また、同時に骨形成能についても検討し、ビタミンC欠乏により、骨や軟骨細胞の分化・機能の障害が惹起されることを確認した。 ビタミンC欠乏単独ではアフタ性口内炎を惹起できないことが確認されたことを考慮し、今年度は,(1)さらにカルシウム欠乏状態が加わることにより,口腔内上皮がどのように変化するのか検討する、(2)イヌの胆道管を結紮することでアフタ性口内炎を実験的に惹起できた報告があったので,その実験手法の確立を目指す、以上の2点について検討した。 その結果、いずれの場合においても、ラットの粘膜に肉眼的、組織学的に病的な変化は認められなく、新たな手法の開発の必要性が示唆された。
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