研究概要 |
昨年度、歯周病関連細菌のひとつであるPorphyromonas gingivalisの定着に関わるfimAに着目し、P. gingivalisの生体外環境における生態系についての示唆を得たので、これを多数種の口腔由来細菌を網羅して検討できるよう、定量的な検出系を構築した。 すなわち、16S rRNA遺伝子を指標として口腔内由来細菌20種の定性検出を行うことができるDNAチップ(ParoCheck, LambdaOne社,Australia)ならびにPorphyromonas gingivalisW83株染色体DNAを用いて、定量性を持った検出を行う系を完成させた。この系を用いて、歯周ポケット細菌叢細菌の定量的な検出を行ったところ、20種の細菌は個体差はあるもののポケット内細菌叢細菌の約50%を占め、ここの細菌種の構成比率は既に国内外で16S rRNA遺伝子を標的としてDNAクローニング法によって推定されてきたものとほぼ一致していた。しかし、Bacteroides forsythusは歯肉縁下歯石と歯肉縁下プラークの間で、その存在比率が大きく異なる菌種であることが明らかとなった。本菌種が歯石石灰化の機序に関与するという報告はなく、嫌気度の高いプラーク深部に好んで生息し、石灰化において巻き添えになって石灰化物の中に封入される可能性があると考察した(樋口他)。 歯周組織以外の生体内細菌叢や環境細菌叢からの検出については、昨年度と生活排水に源を発すると考えられる口腔細菌数種を検出した。河川の流水の中で嫌気性細菌がどのような生態を持つのかについては不明の点が多いが、水生プランクトンや微小な有機物の塊に関連する嫌気的環境生活圏としていることを示唆する結果を得た。
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