研究概要 |
代表的な不斉2級アルコールの非ベンジルアルコール型として(R)-(-)-2-octanol(1a)、ベンジルアルコール型として(R)-(+)-1-phenyl-1-ethanol(1b)を原料基質に用い、標記研究課題の検討を行った。 (1)これらの不斉2級アルコールをTMSエーテルとした後、触媒量のcetyltrimetylammoniumu chloride (CTAC)の存在下、CHC1_3とアルカリによるジクロロカルベンの発生・挿入反応の反応条件を検討した。50%NaOH水溶液と共に加熱撹拌する条件の他に、下記の方法で調製した粉末アルカリを用い、超音波照射条件下でも短時間(2時間程度)で反応が進行し、不斉3級dichloromethylcarbinol体(2a,2b)がそれぞれ収率54,81%で得られることが分かった。粉末アルカリはNaOHとCa(OH)_2重量比4:1で混合し、電気炉で400℃,1.5h焼成し、すり潰して調整した。 (2)非ベンジル系基質から得られた2aをMeOH中K_2CO_3(5eq)で室温、長時間(10h)処理すると,(S)-(-)-2-methoxy-2-methyloctanal(3)が79%で得られた。このものの構造は2-methylocteneをSharpless法で不斉酸化して得られる(R)-2-methyl-1,2-octanediolとの化学的相関により、立体特異的反応性を含めて証明した。 (3)ベンジル系基質から得られる2bを同様に処理すると、(R)-2-hydroxy-2-methyl-phenylacetaldlhyde dimethyl acetal(4)が高収率(92%)且つ、立体特異的に得られた。このものの構造は化学変換により既知の(R)-2-methoxy-2-methylphenylacetic acidと同定して決定した。 (4)上記の結果について、非ベンジル系基質では中間体2-chlorooxirane誘導体(5a)へのMeO^-のS_N2型攻撃が起こり不斉中心の立体化学が反転した(3)が得られ、ベンジル系基質では中間体2-chlorooxirane誘導体(5b)の転位反応が速やかに進行し、まずα-chloroaldehyde(6)が生成し、次にMeO^-のS_N2型攻撃が連続して起こり、不斉中心の完全な2重反転機構を経て不斉中心の立体化学が保持された(4)が得られたことが分かった。
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