研究概要 |
薬物・化学物質と生体膜ないしは脂質膜(リポソーム)との相互作用を感度よく,精度よく測定する方法の開発を目指すとともに,生体膜と薬物との相互作用の機構を考察することを目的としている. リポソームをカラム材料に固定化して,HPLCの方法を利用して,脂溶性陽イオンであるtetraphenylphosphoniumおよびtriphenyl-n-alkyl (n=1-6)-phosphonium同族体のリポソームへの分配率を求めた.溶離位置は,それらホスフォニウムイオンの脂溶性に従っていた.一方,その溶出パターンを解析すると,単純なHPLCの溶出理論には合致しないことが分かった.すなわち,溶出パターンの広がり(二次モーメント)は,溶媒の流速に反比例するはずであるが,実験ではその流速の2乗に反比例した.その理由を検討して,リポソームカラムに対する理論式を構築した. この理論の骨子は,リポソームという大きな物体がカラム材料に固定化されているので,溶媒の流れは乱れてしまい,通常のHPLCの理論が適用出来ないと考え,ある範囲の薄い板状の部分では,HPLCの理論とは反対に,よく撹拌されている仮定したことである. この理論によれば,リポソームへの吸着や脱着速度が,流速とともに,溶離パターンを決める.そのため,実験からリポソームへの吸着や脱着速度を求められるようになった.その速度は,アルキル鎖のnの値の偶奇に依存した.これらホスフォニウムイオンの膜透過の速度や水和でも,偶奇性が見られており,その原因の分子論的な解明が次の問題である. バクテリアの膜ベジクルの固定化を試みている.これにより,膜タンパクと基質との相互作用が調べることが出来る.
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