研究概要 |
療養環境の空気の質の評価システムについて,実地での利用を重ねた。その結果,評価システムとしては二酸化炭素濃度と一酸化炭素濃度にきわめて強い相関が見られ,二酸化炭素濃度の測定のみで空気の質のおおよその評価が可能であることが高い精度で確認された。 看護者の意識に関する調査については,倫理的な問題から,十分説明できる聞き取り調査に限った。そのため,調査対象は,現役看護師,看護学生とも多数ではないが,特に完全空調下では空気の質を意識することが少ないことが再確認された。 引き続いて実施した計測では,予備実験同様,二酸化炭素濃度は一般的な環境基準は超過しないものの,二酸化炭素を空気の質の総合的評価に用いる場合の基準(ビル管理法の基準)に比べると,その基準を超過する時間・場所が存在した。時間ごとの変化は,季節,曜日等を問わずほとんど同相で,活動期での上昇,夜間・深夜の減少など予想通りのものであり,また病室の構造などによる違いについても,予想通りのものであった。これらの結果は,それを意識して環境の改善に努めることが先決との考えから,その情報を共有できるようWebページでの公開と電子媒体での配布を現在準備中であり,それに留める予定である。この情報の共有により,看護者あるいは病院管理者への提言,学生への教育に資することを期待している。 本研究と並行して,看護教育におけるこれらへの意識の啓発を念頭に,教育プログラムの開発を行った。「生活援助論」,「医療と福祉の人間工学」,「医療物理化学実習」の授業科目で実施した。その実践報告については,日本看護学教育学会において「基礎教育と専門教育の連携-基礎科学知識・問題解決能力の育成を専門教育・看護研究につなげる-」(矢部正之,阪口しげ子)と題して報告された。
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