研究概要 |
平成15年度に実施した二次元画像による時空間認知スキル評価のための実験から,興味深い現象が観察された。すなわち,自由落下物体の位置予測課題において,判断した位置は,実際の位置よりも過少評価し(実際の位置より手前に判断する),自由落下運動においても実際の速度より遅い落下速度で物体運動をイメージ(このイメージした速度を予測速度とした)し,位置予測するという予測速度低下現象が観察された。 平成16年度は、この現象の原因を解明するために、原因仮説を設定し,その仮説検証を行った。第1実験では,(1)自由落下による加速運動の影響。(2)落下運動が遮蔽されるまでの時間が短い,または速度が速すぎる。の2点仮説を設定した。これらを検証するのために,物体運動速度を等速3m/s(遮蔽時における自由落下の速度は3m/sであったため),等速1m/s,自由落下の3条件に設定し実験を行った。この結果,自由落下と等速3m/sの条件では,ほぼ同様な位置を判断し,予測速度は実速度の1/6程度であった。また,等速1m/sの条件においても,予測速度は実速度の1/4程度で,実速度よりはるかに遅いものであった。したがって,これらの予測速度低下現象は,物体運動の加速や速度の影響によるものではないことが明らかとなった。 さらに,第2実験では,(1)自由落下運動がイメージできない。(2)板に隠れる瞬間が板への衝突印象を与える。の2点の仮設を設定した。物体が,遮蔽板(板の変色によって視覚刺激も提示する)の前面を落下する実験(落下の様子が十分に観察可能)において,板の変色時の位置を判断する課題や衝突印象を排除するため,遮蔽板を延長し,遮蔽板の途中でボールが消失するように設定した課題を行った。しかし,この2つの条件も原因とはならないことが判明した。一方,自由落下が見えているにもかかわらず,板が変色した時の実際の位置より上方(運動方向と反対側)に判断するという,位置認知エラー現象が観察された。この原因については,解明には至らなかった。
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