研究概要 |
本研究は新潟大学理学部および大学院自然科学研究科とデルフト工科大学応用科学部(オランダ)との間の交流協定を背景にした.内容については計算物理における基本的手法から多数のコンピューターの同時利用によって大規模計算を可能にする先端的並列計算技術までカバーすることを目的とした.参加する学生は単に受動的に講義を聴講するばかりではなく,学生同士が国際的チームをつくり講義を補完する様々な演習課題を共同で遂行した.これは学生に対して課題解決能力の獲得ばかりではなく,英語を用いたコミュニケーション技術を向上させる機会を与えるためである.通常のコミュニケーションはインターネットを使って行われた.合わせて相互に訪問する機会を計画に組み入れた.まず2002年9月28日から約1週間,デルフト工科大学側から教員2名および大学院生3名が新潟を訪問し,共同講義が開始された.PCの組み立て,並列計算用PCクラスターの構築および経路積分量子モンテカルロ(PlQMC)シミュレーションの講義が実施された.10月中旬から12月初旬までPlQMCの応用として液体ヘリウム中の電子拡散の問題が演習課題として行われた.12月14日から約1週間,新潟大学側から教員1名および大学院生4名がデルフト工科大学を訪問し,密度汎関数理論に基づく第一原理電子状態計算に関する講義が行われた.訪問後,2003年3月末までシリコン中の電子状態を求めるための計算コード作成が行われた.いくつかの問題点(インターネットテレビ会議の利用がネットワークの制限で実施できなかったこと,博士論文や修士論文の研究との両立のむずかしさ,学生の英語力の不足など)が浮かび上がってきたが,このような試みが我が国における物理高等教育の改善につながるものと自負している.本共同講義の途中経過が2002年12月21日の日本物理教育学会新潟支部会で報告されたことを付記する.
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