研究概要 |
本研究の目的は,人間の感性に影響を与える感性因子を定量的に評価し,人工的に感性因子を組み込んだ形状を創製するシステムを開発することである. 本年度は形状デザインの定量的な判断基準として,形状に含まれる周波数成分を利用し,この周波数成分を応用して造形物の形状を設計する研究を行った.下記に研究内容を記す. 1.測定対象として,工芸品である手作りの茶器と,工業品である深鉢や湯飲みを選び,それぞれに含まれる形状周波数スペクトルを抽出し,両者の違いを比較した. 2.CADデータとして,円筒状の基本形状に茶器に含まれる周波数成分を付与し,人工的に茶器形状を設計し,同形状のソリッドモデルを光造形法を用いて作製し,基本形状と周波数成分付与形状が人間の感性に与える影響の違いを,SD法を用いた官能評価により確認した. 今年度の研究で得られた結論を以下にまとめる. 1.測定対象の茶器において釉薬の厚さが形状に含まれる周波数成分のパワースペクトルの傾きに比例的な関係を持つこと,工業製品のほうが工芸品に比べて低いスペクトル積分値を示すことなどを明らかにし,表面テクスチャの周波数スペクトル解析により工業製品と工芸品の分類や釉薬の状況の判別ができることを明らかにした. 2.周波数成分を人工的に付与した造形物を作製する方法を提案し,周波数成分を付与した形状の設計が可能であることを確認した. 3.17個の修飾語対を用いたSD法による官能評価を実施し,その結果と,形状に含まれる周波数成分との相関から,パワースペクトルが大きければ,形状の凹凸が大きいという印象を与えること等の形状に含まれる周波数成分の特徴が,感性の評価基準として利用できることを明らかにした. 以上より,パワースペクトルの大きさと,グラフの傾きという周波数成分の特徴から,形状の凹凸,表面粗さ,嗜好に関する印象を評価できると考えられる.
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