研究概要 |
I.研究内容の概要 研究計画申請書に従い,従来の感染症伝播に関する数理模型では取り扱えない新規の計算機模擬実験を提案し,以下の研究に取り組んだ。各模擬実験に共通する記述因子として,日周接触者数,感染確率,潜期,初期発症者数,感染可能期,免疫期等がある。特に,日周接触者数と初期発症者数を詳細に変化させ,実験結果を統計学的に処理・検討を加えた。 1)麻疹伝播の統計学的評価(最大2000日の経過追跡) 出生者と予防ワクチン接種率を実際の調査データに適うように変化させ,最大5年半に期間の伝播の様子を追跡した。 1-1.閉鎖地域内の出生者と除外者を考慮した地域内感染症伝播模擬実験 1-2.地域住民の相互移動,出生者,除外者を考慮した3地域の感染症伝播模擬実験 2)Hong Kongにおける新型肺炎(SARS)の伝播への応用と統計学的評価(最大500日の経過追跡) 2-1.Hong KongにおけるSARSの疫学調査に基づく感染症伝播模擬実験(その1) 超伝播者(Super-Spreader, SS)の感染力を常伝播者(Ordinary-Spreader, OS)の10倍とした実験 2-2.Hong KongにおけるSARSの疫学調査に基づく感染症伝播模擬実験(その2) 超伝播者(SS)の日周接触者数を常伝播者(OS)の10倍とした実験 II.検討を加えた分析結果の特徴とその概要 1)麻疹伝播の期間には,初期発症者数は殆ど影響しない 2)日周接触者数は,3から7に掛けて麻疹伝播の期間に相関がある 3)SARSでは,超伝播者(SS)において,その感染確率は日周接触回数とほぼ同等の有意の関係がある. 4)SARSでは,隔離までの期間が3日/4日になると甚大な被害を及ぼす 5)実際のSARSでは,感染者の隔離までの期間が2日と3日が混在していたことが推定される III.成果の発表 1)数理社会学会において,2報を発表した(第35回:大分大学,第36回:慶応義塾大学) 2)詳細に検討した結果を加えて国際誌への投稿を執筆している
|