研究概要 |
3年間の調査から,以下のようなことが判った. (1)石材として利用される大谷石は,層序関係から最下部層,下部層,中部層,上部層とに4分される. (2)石材としての大谷石の採掘は露天掘りの場合もあるが,採掘が地下で行われた地域では,その採掘跡が空洞化しており,その上部が崩落するという岩盤崩落災害がしばしば起こっている. (3)一般に熔結度の低い細目石(上部層)の分布する地域において,岩盤崩落が顕著である.次いで中部層の軟質荒目の分布する地域で少し発生し,同じ中部層の硬質荒目地域では岩盤崩落はほとんど発生していない. (4)岩盤崩落は,断列系に沿ったところや二次的な割れ目が交わるところに発生しやすい. (5)下位のものほど熔結度が大きくなっている.すなわち岩石の強度としては下位の硬質荒目が最も大きく,上部の細目がもっとも小さい. (6)上記の(4)と(5)から,岩盤崩落の地域的偏在は,分布する岩石の強度にコントロールされている可能性が示唆された. (7)野外観察から,大谷石は冬季の乾燥時に塩類風化していることがわかった. (8)大谷石を用いた塩類風化実験をおこなったところ,大谷石は強度が弱く小さい間隙が多いことから,極めて塩類風化に対する抵抗性が弱いことがわかった. (9)岩盤崩落の平面的形状をみると,円形の場合が多い. (10)大谷石の強度試験と弾性波速度の計測を行い,寸法効果を考慮して,せん断強度を見積もった. (11)エコーチップ硬度計を用い,含水比の増加に伴う強度低下を検討した. (12)上記の(11)と(12)の結果を用い,岩盤崩落のメカニズムについての安定(不安定化)解析を行ったところ,降雨による強度低下が岩盤崩落をもたらした,という解釈ができた.
|