研究概要 |
クーロン相互作用でイオンが強く結合したプラズマは白色矮星などの高密度星内部で,実験室系ではレーザー冷却されたイオントラップ系で実現されている.本研究によって得られた,2種のイオンが負電荷一様背景中で不規則に固溶した固体(クーロン固溶体)の相分離に対する安定性およびその弾性的性質についての詳しい解析結果が公刊された.今年度混合安定性についての解析をさらに進め,電荷比が約6以上で大きな電荷をもったイオンの組成比0.2近傍においてもっとも混合相が安定化することを見いだした.ローレンスリバモア国立研究所ではBe^{+}とXe^{+44}とからなるイオントラップ系のレーザー冷却実験が最近行われた(L.Gruber, Phys.Rev.Lett., vol.86,pp.636-639,2001).その実験では組成比が非常に小さいXeイオンが中心部に集中し,レーザー冷却のターゲットであるBeイオンがXeイオンを取り囲むように相分離が生じた.本研究の結果に照らしてみるとXeイオンの組成比を最適値0.2に近づけることによってXeイオンに対する間接冷却の効率が格段に改善される可能性があることが分かる.今後,そのようなイオントラップ系におけるプラズマ相特性の解明とともに多価イオンを間接冷却する有効性について分子動力学シミュレーションによって定量的に検討する.付け加えて白色矮星の内部でクーロン結晶が実現されているとの観測事実がつい最近報じられた(朝日新聞,2004年2月19日).これは高齢の白色矮星の振動を詳細に分析することに拠っている.観測精度の向上とともに本研究で得られたクーロン固溶体の弾性定数についての知見が白色矮星の内部状態の解明に大いに役立つものと期待される.
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