研究概要 |
平成14年度は,カルパスタチン断片に対する切断部位特異抗体が認識する新たな95kDa分子が非骨格筋型ミオシン重鎖(A型)(MH-A)の断片であることを明らかにし,切断部位の決定を行った.C末端の解析は,MH-Aに存在するカスパーゼ認識配列をペプチド合成し,イムノブロットに対する競合で調べた.その結果,抗--DAID-COOH抗体がC末端配列--EEVD-COOHに結合したことが判明した.同様な方法でアポトーシス細胞抽出液からカスパーゼによって生成するC末端を検索すると,熱ショックタンパク質関連分子Apg-2とDNA依存性プロテインキナーゼ構成要素Ku80が新たに見つかった.これらの分子はいずれも今までに報告されておらず,切断部位特異抗体の分子検索ツールとしての有用性が再確認された.特に,Ku80では本来のC末端から2残基がカスパーゼによって遊離するという電気泳動では検出できないプロテオリシスが発見された.Apq-2に対する切断部位特異抗体(免疫原:--DHLD-COOH)をもちいて,C末端配列の認識特異性について詳細な検討を行った.C末端4残基を種々のアミノ酸で置換し,AAAAAADHLX-COOH, AAAAAADHXD-COOH,AAAAAADXLD-COOH,AAAAAAXHLD-COOH(X;A,C,D,E,F,G,H,I,K,L,M,N,P,Q,R,S,T,V,W,Y;AAAAAAはスペーサー)を固定化したELISAで抗体の結合を調べた.その結果,C末端1残基目はアミド型Dやグルタミン酸には結合せずDに特異的であること,2残基目はイソロイシンやバリンとは反応が弱くLに特異的であることがわかった.3残基目では,L>H>F>M>Y>W>C>N>I>Tの順に結合した.4残基目はどのようなアミノ酸でも同等に結合する傾向がみられた.本研究によってC末端3残基が抗原抗体反応にかかわっていることが明らかになり,新しいC末端解析法を実行するための基盤が確立した.
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