研究課題
萌芽研究
細胞は環境の要求に応じて多くの細胞機能を適切に制御する必要がある。各細胞機能を一つのシステムとみなせば、この問題はシステム制御の問題として捉えることができる。カルモデュリンはCa2+情報伝達系で重要な役割を持つCa2+結合タンパク質であり、Ca2+と結合することで多種のターゲットタンパク質と結合し、その活性を調節している。多くのターゲットのカルモデュリン結合部位の間にはアミノ酸の一次配列上の相同性がなく、カルモデュリンによる多種のターゲットの認識機構には大きな関心が寄せられている。そこで、カルモデュリンのCa2+存在下、非存在下における多種のターゲットとの結合スペクトラムをin vitroおよびin vivoで測定し、分子遺伝学的手法を用いて、両結合スペクトラムの差の生理的意義を調べることにした。これにより、カルモデュリンの情報伝達モード切り替えスイッチ仮説の検証を目指した。10以上のカルモデュリンのターゲットについてin vitroの実験系で、すなわちゲルオーバーレイ法、免疫沈降法を用いて解析した結果、まず、酵母CaMはCa濃度を感知する「切り換えスイッチ」の役割を担いうる性質を持っていることを明かにした。さらに、Ca非結合型に固定されているCaM (cmd1-6)を使って、Ca非結合型でも結合できる標的タンパク質があること、およびCa非結合型では活性化できない経路があることを示した。以上の結果は、CaMはCa濃度を感知して2種類の異なる機能を果たすという、「切り換えスイッチ」の役割を担っていることを支持している。
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