研究課題/領域番号 |
14658221
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研究種目 |
萌芽研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
分子生物学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 勉 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 講師 (20292782)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2003年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2002年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | ミトコンドリア / tRNA / アミノアシルtRNA合成酵素 / tRNAアイデンティティー |
研究概要 |
tRNAが正しいアミノ酸を受容する過程(アミノアシル化)において、個々のtRNAには対応するアミノアシルtRNA合成酵素にのみ認識されるための配列的、構造的な特徴からなる「tRNAアイデンティティー」が備わっており、1種類のアミノ酸のみを受容し、他の19種類のアミノ酸の取り込みを排除している。これまでの考えでは、このtRNAアイデンティティーこそが翻訳精度を維持するための要であると信じられてきた。ところが、最近我々はいくつかのミトコンドリアtRNAが他のアミノ酸を効率よく受容することを見出し、本研究では翻訳精度を維持するための新しい概念である「反応速度論的識別機構(kinetic discrimination)」を提唱し証明することをめざしている。今年度の成果として、SerRSではtRNA^<Gln>の比較的高いミスアシル化反応以外に、tRNA^<Ala>、tRNA^<Asn>の有意なミスアシル化を観測した。LeuRSでは二つのtRNA^<Leu>以外にtRNA^<Ser>(UCN)のミスアシル化が見られた。PheRSに関してはミスアシル化反応は見られなかった。LysRSに関してはtRNA^<Glu>、tRNA^<Asn>、tRNA^<Gln>のミスアシル化が見られた。またAlaRSに関してはtRNA^<Ser>(UCN)のミスアシル化が見られた。SerRSの解析ではウシの酵素に対して、ウシtRNAを使ったが、その他の酵素に関してはヒトの酵素に対して、ウシtRNAを用いたので、種の特異性が問題となる可能性があった。そこでヒトtRNAを用いて検証を行ったところ、ヒトtRNA^<Glu>、tRNA^<Asn>、tRNA^<Gln>のリジル化は確認されたものの、tRNA^<Ser>(UCN)のミスロイシル化及びミスアラニル化は起こらなかった。ウシtRNA^<Ser>(UCN)がミスロイシル化及びミスアラニル化される原因は73位(識別塩基)のAとG19-C56の塩基対であった。しかしヒトtRNA^<Ser>(UCN)は識別塩基がGであり、この塩基が積極的にミスアシル化を防ぐ負の決定因子であることが判明した。本研究により、同一翻訳系内において様々なミスアシル化が観測された事実は、翻訳精度を維持するためには反応速度論的識別機構が必須であることを示している。また、本研究は、tRNAアイデンティティーの研究において負の決定因子を同定するために有効なアプローチであると言える。
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