研究概要 |
中心小体は細胞周期ごとに自己複製によって形成されるという興味深い性質を持つ細胞内小器官だが,その構築機構は全くわかっていない.本研究はこの中心小体の構築機構を遺伝学的に解析するため,その形成に異常のあるクラミドモナス突然変異体を多数単離することを目的として行われた.我々は以前に中心小体(鞭毛基部体)を完全に欠失した突然変異体(bld10)を単離しているので,この変異株の表現型を参考にしてスクリーニングを行った. insertional mutagenesis法によって作出した変異株約250,000株をスクリーニングした結果,bld10と同様に分裂異常を示す基部体変異株と思われる株が8株得られた.遺伝解析の結果,このうち2株はbld10の,1株はbld2の新規alleleであることが判明した.他の5株は新規の変異株であった.このうちの1株は基部体が細胞前端部にクラスターを形成しており,中心小体の複製制御機構に異常があることが示唆された.残り4株については顕著な異常は観察されなかったが,基部体機能に何らかの異常を持つ株だと考えられる. 今回得られた新規alleleをもちいて,bld10のサプレッサーが単離できたことも重要な成果の一つである.これまでbld10のサプレッサーは単離されていなかったが,今回合計8株が単離された.このうち3株はextragenic,5株はintragenicのサプレッサーであった.これらの株はBLD10の機能を研究する上で重要なツールになると考えられる. 今回得られた8株のうち3株が既存の変異株のalleleであったことは意外な結果であった.その理由として,同じ変異誘発方法では得られる変異株が限られることなどが考えられる,このことも今後のスクリーニングにおいて重要な知見になると思われる.
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