研究概要 |
1 人工毒素受容体の作製:増殖因子活性を失い且つ毒素結合活性を維持している変異型毒素の作製を行った。DT(ジフテリア毒素)とHB-EGF(毒素受容体)とが結合した状態の3次構造は明らかにされており、結合に重要なアミノ酸やその領域(EGF相同領域)も明らかにされている。逆にEGFやTGFの研究により、どのアミノ酸が変異すると増殖因子としての活性を失うかも報告されている。これらの情報を総合的に判断し蛋白質立体構造をシミュレートすることにより、純粋毒素受容体を得るために必要なアミノ酸変異部位候補をしぼり、そのアミノ酸について部位特異的変異を導入した。具体的にはHB-EGFの5種のアミノ酸(I117,V124,R128,Y138,L148)を種々のアミノ酸に置換した変異のうち、ほぼ増殖因子活性を失ったものとして、Y138D,Y138L,L148Vの3種が、ま.た3分の1程度に低下したものとして、I117V,I117A,V14Fの3種が明らかとなった。この中でさらに毒素受容体活性を測定した結果、野生型と同様の活性を有している変異が3種(I117V,I117A,L148V)、1桁感受性が低下している変異が2種(Y138L,V124F)あることが判明した。昨年行ったプロテアーゼ耐性型のL148S/P149T HB-EGFについても現在検討中である。 2 本法が肝細胞以外にも使えるかどうかを明らかにするため、インスリンプロモーター下流にHB-EGFをつないだtransgeneを作製し、膵臓ランゲルハンス島β細胞に毒素受容体を発現するトラシスジェニックマウスを作製した。これらのマウスに毒素を投与することによりβ細胞を破壊し、糖尿病が引き起こされるかどうかを確かめている。現在毒素投与により血中のグルコース濃度が顕著に上昇することが観察されており、狙い通り毒素により糖尿病を引き起こしている可能性が高いと考えている。
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