研究概要 |
前年の検討により、適切な組成のコポリマーと接触させることでウイルスの感染価が劇的に減少することが観察された温度応答性のN-イソプロピルアクリルアミド、正荷電のN,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、疎水性のブチルメタクリレートの3つのモノマーから成るランダムコポリマーと弱い界面括性を有するポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから成るブロックコポリマーであるプルロニックのセンダイウイルス感染価への効果について比較した。F68,F108,L61,L101などポリエチレンオキシド鎖とポリプロピレンオキシド鎖の分子量が異なる9種類について比較したところ、両鎖が最も短く、疎水性度が最も高いL61で、感染価が80%減少した。それに続く40〜60%の減少を示したのが、P84とL101もL61についで疎水性が高いポリマーであった。以上より、センダイウイルスの感染価を下げる効果で疎水性相互作用が主要な役割を果たしていることがわかった。これに対し、温度応答性のコポリマーでは、ウイルス感染価の減少は99.9%と大きかった。この違いの原因として考えられるのは、温度応答性高分子のみにある正荷電か、ブチルメタクリレートとN-イソプロピルアクリルアミドによって得られる適切な疎水性によると考えられる。 また、温度応答性コポリマーで得られたウイルス感染価減少効果がウイルス特異的であるかを調べるために感染価を90%減少させるポリマー濃度と、LLCMK2細胞へのIC50の濃度比を求めたところ、11以上と大きな値であった。これに対し、低分子界面活性剤のSDSではこの値が2と小さかった。以上より、温度応答性コポリマーで得られたセンダイウイルスへの作用は、かなりウイルス特異的であることがわかった。
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